完璧な空への飛翔、そのための拒食(1)

羽をもがれた天使がコンビニでレジを打っている。 

 

 

濡れたアスファルトに落ちている羽毛さえに気高さを見いだす。

 

 

飛翔へのあこがれ

 

上記の私のツイートからは、自分の「羽 」「飛ぶこと」への憧れを強く感じられる。

 

高校生のころに、ある本を読んだ記憶がある。記憶の中では、世界への飛翔を求めることとと固執することは、対になるなんたらコンプレックスだと説明されていた。

 

余談ですがもちろん自衛隊ならぜったい空がいいですね。そんな理由は通らないのでしょうけれど。これは冗談です。まあ、日本が戦争に障害者で女の私を駆り出す日には敗北は目に見えているが……。

 

サン・テグジュペリ『夜間飛行』へのあこがれもそういう自分の「癖」が入っている気がする。飛行している時の描写には、夜に光るわずかな瞳の輝きやハンドルを握る手から伝わる意志を感じる。ヒロイズム、使命への誠実さ、命懸けの飛翔。

 

私の拒食遍歴

 

さて、ここで、関係のなさそうな話を始めてみよう。私は10年拒食を抱えて生きてきた。まず、13歳中学生で140㎝そこそこ、体重38㎏。

 

正直客観的には普通体型であったときに、自分よりかなり細く背の高い美人の女の子と友人になった。彼女は中学生にして正直どうみてもモデル体型であった。しかも私より明るく、いわゆる「陽キャ」で勉強しか私が勝てるものはなかった。そして極めつけは健康診断で彼女の数値をこっそり見てしまったことである。

 

それまで私は「容姿」には価値がない、皮をはがせば皆、肉塊であると知っていた。しかしそんな私でも、どうみても細身できれいな女の子のほうが多少勉強ができるくらいの私よりも、完全に人間関係上、いやすべてにおいて得をしているのを見た。

 

そんなきっかけでダイエットを始めたわけである。そして食べる量が減れば減るほどに体重も減っていく。その喜びは勉強はすればするほど点が取れる喜びに酷似している。

 

そして、綺麗になることより、痩せることの楽しみを覚えた。いわゆる「手段の目的化」である。

 

そして中三で155㎝32㎏にまで落とした。健康診断では心配され、精神科を勧められたが両親は精神医療が大嫌いで、わたしはそれを抱えたまま過ごすことになった。

 

高1でスマホを手に入れた。そしてツイッターなるもので摂食障害のひとびとと絡むようになった。個人的な印象として、当時の拒食界隈の人は勉強などのやればやるほど結果の出るものにのめりこむ方が多かった。かなり高いレベルの大学に通う女性や、そのような大学を目指す高校生であったり、医療従事者なのにかなり強烈な拒食をしている方すらいた。

 

その後知った発達障害という概念で言えば、まじめかつ繊細なASDの女性がかなり多かった。もちろん私もWAIS-Ⅳで言語理解と処理速度に60近い差がある立派すぎるほどの発達障害ASDであることは診断済である。

 

ここからも私の摂食障害遍歴は続く。が、長すぎるので高校時代までをまず述べて、次の話題に移る。

 

ASDと拒食女性

最近ふとその当時のツイッターの界隈のことを思い出して、少し摂食障害発達障害の関連について調べてみたことがある。大変個人的な感覚と合致していたのが

 

AN は自閉症スペクトラムの女性変異体 (female variant)である可能性を提案する報告 もある。(1)

(ANというのはanorexia nervosa、神経性痩せ症、つまりいわゆる拒食症を指している)

 

という一文であった。当事者としてどうしても興味を持たざるを得ない情報である。

 

私が就寝時間の6時間前に夕食を食べ続け、そうならないと不快感を覚えてしまうこだわりの強さ、朝食にずっとチーズトーストとコーヒーとカフェイン目的のために栄養ドリンク、それだけを飽きずに食していたあの繰り返し(ルーティン)を好む姿勢、あらゆる食物のカロリーを暗記し、カロリー計算を料理を見た瞬間にできる程の興味関心の偏り、かなりASD的である。

 

そしてツイッターの拒食界隈で交流していた人々もまた同じ雰囲気を醸し出している方が多かった。毎食記録、毎日全裸で体重測定、決めたものしか食べない(その決めた食べ物はかなり我々の感覚では「清浄」であることが多かった)、などなど。そして付随するように勉強や趣味についての細かな時間の計測などのツイートも散見された。

 

この「食べ物の清浄さ」については(2)で書いていきたい。

 

 

17歳の私への、超個人的な言葉

 

私は今、拒食界隈の人々に倣って(?)そこそこには名の知れた大学にいます。拒食との付き合いがほぼ10年になりました。もう拒食的な考えは穏やかになったものの、食べる量も体重へのこだわりも少しあり、体重も軽いため、診断基準ではまだ軽度の摂食障害であるといえます。だからこそ高校時代の私に対して伝えたかった事を、一つだけ書きます。

 

突然ですが私は喫煙者です。摂食障害の方は健康的というかオーガニック志向の方が多い感覚があるので、忌み嫌う方も勿論いらっしゃるかもしれません。

 

しかし、わたしにとって煙草とは仙人の霞です。食べることが肉体的なものだとすれば、肉体に不要どころか害になる嗜好品なる煙草を摂取し、わずかに肉体性に反抗しているのです。

 

もちろんこの反抗が、煙草でなくてもよいのです。なんでもよいのです。

 

私ならば高校生の私に、

 

「あなたはつらい時期かもしれないね。でもほんとうに頑張ってきたね。いま、ダイエットのことで頭いっぱいでしょう?私は、時間はかかったけど、そのこだわりや悩みは薄くなってきたよ。あと、実は煙草を吸っているんだ。ちょっと嫌かもしれないね。でもね、悪くないよ。だから成人して煙草を試せるまではなんとか生き延びようよ。そんなもん、と思うかもしれないけど、でも案外くだらないものが救いになったりするわけよ……。」

 

と、伝えたい。

 

 

次回に続きます。公開時期は未定です。

 

1.(和田良久(2010).発達障害を合併する摂食障害.精神経誌(2010)112巻 8号,p2.)